私たちの平和宣言【令和6年~】


令和7年

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私達の平和宣言

 

令和7年8月6日 広島

 

 時は流れ、多くのものが変わりました。

 

しかし 80年前の今日、それまでに日本各地を覆った無差別爆撃と言うには巨大過ぎる火の玉が、一瞬にして街を壊し、大量の命を奪い、生き残った者には今に続く苦しみを与えた事実が消えることはありません。

 

私達は、今、被爆者達のあとを継ぐ者として、かつて生と死の狭間の中で旅立った人の苦痛を想い、生き延びた人の困難を想い、ここに深い感謝の気持を込めてご冥福をお祈りします。

 

 1945年、世界最初の核爆弾により広島が灰塵に帰してから、核兵器は様々に形を変えました。

今では、「核抑止力が機能する所では小さな戦争は見捨てて自国の安全を図る」という「安定・不安定パラドックス」が、国家間の紛争を地域に局限し、世界大戦への拡大を防いでいます。

 

 1980年代に7万発以上あった核兵器は、その後「ミサイル防衛」などの進展に伴う諸条約により、最近では6分の1にまで減りました。他方、昨年から中国は急速に核弾頭を増加させるとともに、極超音速の変則軌道核ミサイルの配備を拡大し、最早、数の多寡だけでは核戦力の優劣は測れない時代に入りました。

 

そして専制的国家体制を持つ中国、ロシア、北朝鮮の3国は、核兵器を含む武力を背景に国際秩序を自国中心に都合良く変えようとしています。我が国憲法は、終戦直後の国際秩序を前提にしていますが、ロシアのウクライナ侵略は改めてこの前提が過去の遺物だと知らしめました。

 

 紛争を恐れ忌避するだけでは、日本の存在自体を危うくします。今日の国際情勢では、「非核三原則」は核の抑止どころか、核による威嚇への脆弱性を増大させます。

 

 今日、核兵器はどの国でも容易に製造できる時代になりました。イランは軍事攻撃を受けて核兵器取得が遅れていますが、巧みな手段を弄して核兵器を入手した北朝鮮は、安価に「国の絶対安全」を獲得してしまいました。

 

それでも現在、NPT(核拡散防止条約)がある程度機能し得るのは、核兵器を公式に保有できる国が、強制力を背景にして IAEA(国際原子力機関)により査察を行うからです。査察者は、核兵器の最新技術を知り、秘匿された核兵器開発を発見する能力を持つ技術集団でなければなりません。ということは、「核廃絶」はもはや論理的に不可能なのです。

 

 ロシアは、ウクライナが核兵器を手放していたから侵略に踏み切ったようです。しかし、それ故に核抑止力を神話だと否定し、 NPT に「核軍縮の歩みが遅い」と難詰する核兵器禁止条約を称賛することは、思考停止して理想を謳う偽善に等しく、何とか核の拡大を防いで世界秩序を保とうとする自由主義国家群の努力を踏みにじることに他なりません。

 

 現在の核兵器禁止条約加盟国は、条文の義務規定を果すことが殆どありません。色々な条約にはその根拠となる法源が存在します。核兵器禁止条約が法源とする国際法は合法的武力紛争を認めていますから、この条約が謳う核兵器の無条件的否定にはそもそもの論理的矛盾があるのです。

 

よって、この条約の意味するところは、広島市行政や反核平和団体が主張する「核廃絶による恒久平和」とは全く性質の異なるものです。が国がこの条約を批准、履行するなら、日本の安全保障の根幹たる「日米同盟」を覆し、中国の意図する「日米離間工作」を最も利する行動になることが明らかです。

 

 今日、ノーベル平和賞を授与するノルウェーを含む NATO 諸国は身を切る努力をして「核の拡大抑止力」を強化させています。

私達は、世界で唯一核兵器の惨禍を受け、復興を遂げた国民として、偽善的で反日的でない真の平和のために語り継ぎ、行動し、わが国と世界の平和と安全を守る決意を新たにします。

 

過ちを繰り返させないために。

 

平和と安全を求める被爆者達の会


令和6年

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私たちの平和宣言

 

令和6年8月6日 広島

 

~平和のために確固たる抑止力を高めることを訴えます~

 

 

 「原爆許すまじ」と唱え続けて今年で79年。今や主要国は、通常兵器と核兵器の境目のない破壊力の兵器体系を、無人機や極超音速ミサイルなどの最新装備に搭載して戦力の要にしています。

 

79年前の 今日と同じような夏の日の朝、突然広島を襲った核兵器は、日本各地の無差別空襲同様、当時の国際法でも許されない明らかな戦争犯罪であったことを忘れることは出来ません。

 

 あの惨状の中、辛うじて生き延びた父母達は、艱難辛苦(かんなんしんく)の中で私達を育て、血涙を絞って街の復興に尽されました。幼かった私達の瞼に残る風景は、焼野原となった廃墟での野辺送り(のべおくり)、僅かな糧を得る為に苦労した父母たちの姿です。思い出す度に感謝の念が溢れ、その後を継いだ私達も、その後の街の復興・発展に幾ばくかの貢献が出来たのではと自負しています。

 

一方で、「残る桜も散る桜」の例えの通り、先立つ友を見送らねばならぬ老境に入った私達が果たすべき務めは、「最初の戦争被爆地ヒロシマ」という被害者視点の主張よりも、厳しい国際情勢に対して我が国の平和と安全を守るために何を為すべきかを見定め、それをしっかりと子孫に伝えることと考えます。

 

 核分裂現象の発見からわずか7年で、我が国は核兵器の惨禍に遭いました。今ではこの技術と情報は容易に手に入り、核兵器不拡散条約(NPT)の認める5ヶ国以外の国々が核兵器を開発しています。そして核兵器の保有の有無が、政治と軍事影響力に巨大な差を生じさせています。残念ながら「核廃絶」を唱和するだけではこの差を埋め合わせることはできません。

 

 広島が縋り付く(すがりつく)「核兵器禁止条約」には知っておくべきことがあります。それは、核兵器の威嚇をする国と緊密な関係にある条約加盟国がいくつも存在することです。

 

例えば南アフリカは、条約加盟国会議でキューバ、ベネズエラと共同してロシアのウクライナ侵略非難を排除させました。他方でイスラエルだけを国際司法裁判所に提訴しました。さらにロシアの核搭載可能艦船と中国海軍との共同軍事演習を行いました。この国は、ロシアや中国に「条約加盟を推奨する」という義務を果たしていません。

 

さらに、南アフリカと、核兵器禁止条約署名国のブラジルは、ロシア、インド、中国と図って中東諸国をBRICSメンバーに加盟させ、その結果中東の戦乱が拡大し、世界の物流が脅かされています。もはや核兵器禁止条約の規定は遵守するに値せず、国益の追及を優先することが今の加盟国の実態なのです。

 

 それにも拘わらず、「ロシアの核による威嚇で核抑止力は無効になった。だから日本は核兵器禁止条約に参加すべきだ」という不可解な論理を持ち出して条約加盟を強要する広島の為政者達は、我が国の平和と安全にどう責任が取れるのでしょうか?「中、露、北」の核に晒さらされる我が国が「核兵器禁止条約」に加盟することは、直ちに日米同盟とこれに依拠する安全保障の根幹が失われることを意味します。

 

 我が国の平和と安全は、私達自身の責任と努力で達成するしかありません。この条約に「ノーベル平和賞」を授与したNATO加盟国のノルウェー政府は、核兵器禁止条約加盟国会議のオブザーバーとして「核兵器が存在する限り核兵器同盟を続ける」と明言しました。そしてスウェーデンとフィンランドは「核兵器同盟」に加盟する選択をしました。この条約の効果が皆無に近いことを証明しているようです。

 

我が国の安全を守り、また真に平和を求める被爆地の立場から、私達は単に「核廃絶」の願望に身を委ねることはありません。国連憲章51条の「個別的又は集団的自衛の固有の権利」に基づき速やかに日本国憲法9条の「戦力不保持」規定を改定し、確固たる抑止力を高めることを訴えます。

 

二度と「過ちを繰り返させない」ために。

 

平和と安全を求める被爆者たちの会